「Web面接でカンペはそもそもあり?」「Web面接でのカンペはバレる?」
対面と違い、オンライン上で行われるWeb面接だからこそ、カンペの扱いに議論が分かれるところ。
今回は現役の採用担当者として、株式会社文化放送キャリアパートナーズ キャリア支援部 西田祐樹氏が、「採用担当者視点」から、Web面接におけるカンペの扱い方をお伝えします。
Web面接でのカンペ、面接官はどう思っている?
──本日はよろしくお願いします。Web面接では、オンラインで手元が見えないこともあり、「カンペを使っても問題ない」もしくは「バレないから使おう」と考えている就活生はいると思います。そもそも面接官からみて、カンペは問題ないものなのでしょうか?
西田:まず個人的に、Web面接で就活生がカンペを用意していることそのものについて、マイナスの印象を持ちません。しかし実際のWeb面接の場で、目線がずっとカンペに向いてしまっているようなケースや、カンペの文章をそのまま読んでいるような就活生がいます。そんな場合だと、その就活生の人となりを感じ取るのが難しいと感じてしまいますね。
やはり面接はコミュニケーションの場です。カンペの存在そのものが問題というより、カンペをただ読むだけでコミュニケーションを取りづらいことが問題だと思います。
──カンペの存在そのものの是非を問われるというより、円滑なコミュニケーションを取れるかどうかという点が、面接官からみたポイントなのですね。逆に上手にカンペを使っているようなケースはあったのでしょうか?
西田:就活生が話したいことや質問等の抜け漏れがないよう、備忘録的に使っているようなケースは、カンペを上手に使えていると感じました。例えば企業のデータを整理して手元に置いていたり、Web面接を通じ、逆質問で聞きたい話題をメモしておいているようなケースですね。
共通しているのは、円滑なコミュニケーションを取るためのツールとして、カンペを利用しているという点です。
そもそもWeb・対面を問わず、面接は大学受験のように、どれだけ覚えているかの習熟度を競う暗記大会ではありません。社会人になったら、カンペ(というかメモや資料)は業務で普通に使っていますし、むしろコミュニケーションを活発化させるために使うというのは、理に適っています。
面接も同様にコミュニケーションの場ですので、円滑にコミュニケーションを取るための範囲で使う分には、問題ないと言えるでしょう。
ただし注意していただきたいのは、カンペの存在を知った時に、相手がどう思うかを念頭に入れておくということです。
やはり社会人の業務場面と、就活におけるWeb面接は、全く同一というわけではありません。「正確に情報を伝えてくれれば、Web面接でカンペを用意していても問題ない」と考える面接官もいれば、「Web面接であっても、話すことをあらかじめ頭に入れた上で臨んでほしい」と考える面接官もいます。
これは、企業や職種等によって求められる能力や考え方も異なりますし、どちらの考え方が良い悪いという話ではありません。しかし、面接がコミュニケーションの場である以上、相手なしには成立しません。お互いに円滑なコミュニケーションを取るためにも、カンペの存在により相手がどう思うかの配慮は忘れないようにしましょう。
これはマイナス評価!Web面接でのカンペのメリット・デメリット
──カンペと一言で言っていますが、先ほどもお話であったように、コミュニケーションを円滑に取るための資料という見方もできますよね?どこからがカンペとして悪い印象になってしまうのでしょうか?
西田:オンラインで行われるWeb面接であれば、内容を問わずどんなカンペや資料を用意しても問題ないと思います。しかしそれをただ読み上げているようであれば、あまり良い印象とは言えません。最初に少しお伝えした通り、その就活生の人となりを感じることが難しくなりますし、そもそも面接は会話の場であって、文章を読み上げる場ではありません。
ですので、カンペの中身で印象が悪くなるわけではなく、カンペの存在でコミュニケーションを円滑に取ることができないから印象が悪くなるということですね。
ちなみにWeb面接でカンペを読んでいる就活生は、ほぼ分かります。実際のWeb面接でも、同じ方向をチラチラ見ているような就活生を見かけます。また、人によってはWeb面接の際、カンペだとばれないよう、カメラのすぐ近くにカンペを配置しておくというような就活生もいるようですね。しかし人間はどうしても文章を読み上げる時、目線が文章を追ってしまいます。ですので、そういった工夫をされていたとしても、面接官から見てカンペを読んでいるというのは分かります。
──なるほど、Web面接の場合、カンペの使い方次第で印象が悪くなることもあるのですね。とはいえ、Web面接に備えてカンペを用意することで、メリットもあると思います。それぞれのメリット・デメリットを教えてください。
西田:ここまで話してきたことと重複する部分もありますが、まずメリットは話したいこと・質問したいことの備忘録になるという点です。それと、人によってはカンペの存在によって、精神的に落ち着いて面接に臨めるという点ですね。ただ、カンペありきだと先ほどお話ししたように、面接官から悪い印象を持たれてしまう可能性があります。話すことを忘れてしまわないための「お守り」、もしくは自分の気持ちを整理するためのメモ程度にとどめておけば、メリットになりえると思います。
逆にデメリットは、面接官に自身の熱意が伝わらなかったり、カンペを見ていることに対しあまり良い印象を持たない面接官もいるという点です。
やはりWeb面接においてカンペがあると、人によってはどうしてもカンペを読み上げることに集中してしまうことがあります。そうなると、先ほどお話しした通り、人となりが分かりません。人となりが分からないと、どうしても「この人は入社したらどんな形で働いていきそうか・活躍しそうか」を想像できず、評価しようがない=場合によっては落とさざるをえないということもあります。
また、Web面接を通しカンペがバレることにより、企業や職種等によっては明確に損をすることもあります。やはりWeb面接におけるカンペという存在自体、賛否の分かれる部分ではありますので、時と場合を考えておくようにしましょう。
Web面接で、カンペを上手に使うには?
──こうしてみると、カンペも使い方によっては損をしてしまいそうですね。それでも、Web面接でカンペを使いたいという就活生も、一定数いると思います。そんな場合、カンペを用意する場合の心構えを教えてください。
西田:メリットの部分でも少し話しましたが、カンペを用意するとしても、あくまでいざという時のお守り程度に考えるようにしてください。例えば、伝え忘れたことがないか・質問し忘れたことがないかのチェックリストや、キーワードのメモぐらいにとどめ、読み上げられるような文章として用意することは避ける等ですね。
繰り返しになりますが、面接では「その場におけるコミュニケーションを大事にすること」がとても重要です。それはWeb面接であっても変わることはありません。
ただし、Web面接本番で緊張してしまいそうだという人も、当然いると思います。そんな人は、例えば大学での面接対策講座や模擬面接に参加する等して、ある程度カンペなしで話せるようにしておくと良いと思います。そのうえで、いざという時の簡単なメモ代わりにカンペを用意するにとどめたほうが、最終的にカンペありきで考えるよりも、自信を持ってWeb面接に参加できると思います。
やはり時間をかけてカンペをしっかりとした文章として作っても、結局面接官に自分の想いや熱意が伝わらなかった(それどころかカンペを読み上げているということでマイナス評価になった)では、意味がありません。
カンペを用意するよりも、面接対策講座や模擬面接のほうが手間にみえますが、「面接官にしっかり自分の魅力を伝え、コミュニケーションを取る」という目的を考えると、決してそんなことはありません。
あくまで主はコミュニケーションであり、そのコミュニケーションを取るための補助ツールとしてカンペがあるというように、目的と手段を履き違えないように気を付けましょう。
さいごに
──最後に、就活生にメッセージをお願いします。
西田:大前提として、面接は会話を通じてお互いに理解を深め、相互判断していく場です。従って、その場の会話を大切にするというスタンスを忘れないでください。カンペを見ることは、目の前の面接官に対して向き合わなくなってしまう行為になりかねません。やはり、目の前の面接官との対話を大切にするというスタンスを崩さないようにしましょう。
ただ、もちろん緊張や不安もあると思いますので、それを少し緩和するものとしてカンペを準備するのは問題ないと思います。ただし、カンペありきで考えないようにしてくださいね。
就活における面接というと、どうしてもよどみなくスラスラと話せる人が評価されると、就活生は考えがちです。
しかし「円滑にコミュニケーションを取ることで、お互いの理解を深めること」こそが、面接で評価されるということです。
カンペという手段に固執して、この点を忘れないようにしましょう。
皆さんが後悔のない就活をできるよう応援しています。
プロフィール:西田祐樹 [株式会社文化放送キャリアパートナーズ キャリア支援部]
2010年より現職。国家資格キャリアコンサルタントとして、10年以上に渡る各大学での講演や選考対策講座を通じ、多くの就活生を指導。就職を取り巻く環境を、採用側/就活生側両方の視点から読み解きフィードバックすることで、学生が後悔しない就職活動をできるよう後押ししている。また、自社内での採用面接官や、他社の採用活動におけるアドバイザー等、その知見を活かし広く活躍している。
※プロフィールは取材当時のものです
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