――証券会社って“何をしているのか分かりにくい”イメージがあります。実際、どのような仕事をするのか教えてください(正能)
私が新入社員の頃、支店で営業を行っていたときのことをお伝えしますね。まず、8時前後に出社し、朝は社内放送でマーケット動向を押さえるところから始まります。前日の欧米市場の動きや、制度改正のポイント、たとえばNISAや税制の変更などが共有されます。
そのあと朝会で全体の連絡事項を確認して、営業活動がスタート。私の場合は、午前中はお客様への連絡やヒアリングが中心で、電話をしている時間が多かったです。午後は外出して面談、提案、帰社後に報告。1・2年目の社員にはチューターと呼ばれるアドバイザーの先輩がついて、日報や相談を通して毎日フィードバックを受けます。
昼休みはお客様とのお約束次第で柔軟に取れます。若手のうちは定時である17時10分過ぎに退社、全社的にも19時前退社が基本で、意外に思われるかもしれませんが、長時間労働で頑張るというよりは、限られた時間の中で成果を出すカルチャーが浸透しているんです。
――“電話文化”に不安がある若手も多いと思うのですが……いかがでしょうか?(野口)
そうですよね、最近の若い世代の方は固定電話をあまり使わないので最初は抵抗があるようです。ただ私も入社時は抵抗ありましたよ、電話でビジネスなんてしたことはなかったので。その意味では、現在学生の皆さんも私の世代も、そう大きくは変わらないのではないでしょうか。大事なのは、仕事として必要なことを伝えるためのコミュニケーション手段の一つである、ということです。
たとえば、お客様が「リスクは取りたくない」と言ったとしても、その意味は人によって違います。教科書的な定義よりも、本質的な許容度を探っていくんです。例えば「20%の下落はNGだけど、5%なら許容できる」といった感覚をお客様と共有できるように。ただお客様はプロではないので、率直にお伝えいただけなかったり、正確に言語化していただけない場合も多いです。値動きの幅以外にも、運用期間や投資対象など、お客様と共有すべき事項は沢山あります。これらを踏まえて、プロである我々がお客様のお考えや状況を慮ったうえで、適切な順番・言葉遣いで会話を積み重ねていく必要があります。そういう“会話の設計”をするには、私にとっては電話という手段が合っていると考えていました。正直、その場で機転が利かないタイプなので、比較的短時間で済む電話のほうが準備しやすかったということでもありますが(笑)。若手社員もすぐに慣れて、「どのように話せば的確にお客様と意思疎通ができるか?」ということに取組むようになります。どんなビジネスでも必要になる本質的なスキルが養われます。
―― なるほど。“対話”の職人技を習得できるんですね。難しそうですが、日々成長できる環境だと感じました。(正能)








