
寺内 香織
Kaori Terauchi
執行役員
法務部安全保障貿易管理室長
原動力にかえて、
いま新たなステージに挑む
司法試験をめざしながらの就職活動は全く身が入らず、ことごとく落ちていました。見かねた友人たちがOBOGとの食事会に誘ってくれて、行った先にある総合商社の社員が。そこで聞いた話があまりにも面白くて、一夜にして総合商社志望となりました。伊藤忠商事に決めたのは、会う社員がみなユニークで、 中には「うちじゃない方が良いのかもしれない」と言ってくるほど本音で話してくれる人もいたから。思ったことを正直に言える会社って素敵だなと思いました。
入社後は、機械カンパニーの石油化学プラントなどを扱う部署に配属。2年ほど事務方で基礎を学び営業に就きましたが、仕事に全くついていけず、力の無さを感じるばかり。悶々としていたある日、特定テーマ研修制度を使って海外のロースクールに行く話が舞い込みます。「なぜ私?」と思いましたが、何か自信を得たかったので意を決してニューヨークへ。駐在先ではひたすら勉強に専念させてもらい、無事ニューヨーク州の弁護士資格を取得しました。慣れない英語授業や試験はハードでしたが、世界中に友人ができて、楽しい思い出しか残っていません。

帰国すると、「ロースクールを出た」ということで契約に関する相談が次々に寄せられました。いきなりビジネスで活用できるほどではなかったのですが、それでも数をこなすうちにコツがつかめてきて、気が付けば現場と法務部の間に立つような役回りに。初めて 部署の役に立てた実感が何より嬉しかったです。その頃に第一子を出産。復帰後は海外出張もままならなかったので、進んで契約業務に専心しました。その後10年にわたってインドネシアでの電力開発に従事します。それまでのトレードやフィービジネスとは違い、海外での投資事業はスキームも契約も格段に複雑。パートナー企業、銀行団、アドバイザーを交えたダイナミックな交渉は知識やスキルだけでなく、私に大きなやりがいを与えてくれました。余談ですが、当時会社が職場近くに託児所を開設してくれたおかげで、一男三女を育てながら仕事に邁進で きました。
伊藤忠商事ならではの育成法と言えば勝手に名付けた「無茶ぶり」です(笑)。絶妙な難題に取り組ませ、知らぬ間に成長へとつなげてしまう。私もそれで育ててもらいましたが、中でも2020年の豪州子会社への赴任は課長も経験せずにいきなりの社長職。事業分野も未経験で、初めは社員を纏められ ず本当に苦労しました。でも苦しみ抜くと答えは見つかります。最後は本当に良いチームになりました。単身子連れでしたが子供達の存在も支えでした。
2024年に法務部安全保障貿易管理室の室長、そして執行役員を拝命しました。無茶ぶりにも限度があるだろうと思いましたが、求められればそこに全力を尽くすのみと腹を括っています。最大の理解者兼コーチである夫は「これまで夫婦で面白く生きてきたんだから、これからも楽しもう」と背中を押してくれ ます。新たなステージで今度はどんな景色が見えてくるのか、楽しみで仕方ありません。
Career Timeline
1998
最初の配属先は、
機械カンパニーの化学プラント部
包み隠さない社員の率直さに惹かれて入社。化学プラント部で初めて見た商社ビジネスは難解で厳しく、自信も喪失。
2002
特定テーマ研修生として、
ニューヨークに派遣
新たな成長機会を求めて渡米し、ロースクールに入学。英語もおぼつかないなか猛勉強を経て、ニューヨーク州弁護士資格を取得。
2007
帰国後は契約業務に専心
ロースクール出身の肩書からか、契約関連のサポート依頼が殺到。一男三女を育てながら、得意分野を磨いていく。インドネシアでの電力開発事業では保険契約を主導。
2020
豪州子会社の社長に就任
シドニーにあるI-Environment Investments Pacific Pty Ltdへ、娘三人を連れて赴任。Managing Directorとして4年間経営に従事。
2024
執行役員に就任
法務部安全保障貿易管理室の室長として、様々な輸出取引が外為法や各種制裁法に抵触せず適切に行われるよう管理・指導に当たる。